2015年9月24日木曜日

VW排ガスデータ不正問題でディーゼルエンジン車が全滅?

フォルクスワーゲンがアメリカの排ガス規制(NOx規制)を逃れるために、実験を行ったディーゼルエンジン(DTI)に規制をクリアするための不正なソフトウェアを搭載していたことが問題に。韓国でもVWは人気だから、結構大変なことになってるらしい。

ゴルフだけではなくアウディ・A3もリコール。ヨーロッパで市販されてる新車の半分近くはディーゼルエンジン車ということもあって、VWの株価も絶賛降下中。

http://nikkei225jp.com/chart/
ただ自動車業界全体に波及する可能性もあってか、それに釣られて日本の株価(9月24日)も絶賛降下中。特にクリーンディーゼルで復活を果たしたMAZDAの株価は7%近い下げ。そこで心配されるのが「ディーゼルエンジン車の今後」だと思われます。


ディーゼルエンジン車にはNOxは付き物

そもそもディーゼルエンジンとは何なのか?

ディーゼルエンジンとは点火装置が不要で、液体燃料をそのまま圧縮着火させてる。だから発火しやすい軽油が燃料として使われているらしい。ただその分だけ結果的に圧縮比が高くなるものの、低速時での加速性能が高くなり、ガソリン車よりも一般的に燃費が良い。

でもデメリットもあって、それが燃料を均一に燃やすことが難しく、結果的にNOxが生成されやすいということ。圧縮比が高すぎるが故に、空気と燃料がしっかり混ざる前にピストンしまくる。空気と一緒に燃えない奴はNOxやススとして排出されちゃう。今回のフォルクスワーゲンの不正は、まさにその「NOx」がキーワード。



でも何故ディーゼルエンジン車が販売できてるのかというと、NOxを後処理する技術が開発されたから。例えば、先日トヨタ・ランドクルーザープラドに搭載されたディーゼルエンジンだと、尿素SCRシステム(アンモニア水)を使ってNOxを吸蔵。

今回のフォルクスワーゲンや三菱自動車はプラチナといった触媒で後処理してる。実際プラチナの需要な44%はクリーンディーゼルエンジン向けらしく、VWの問題を受けてプラチナ価格も暴落。

ちなみにマツダのディーゼルは圧縮比を低くすることで、空気と燃料が混ざり合うように待ってからピストンするようになってる。結果的に、NOxの排出自体を法的規制の範囲内に抑えてる。だから多分マツダは対岸の火事で問題ないはず?

フォルクスワーゲンはどんな不正を働いたのか?

じゃあフォルクスワーゲンは一体どんな不正を働いたのか?

今回の不正ソフトウェアの正体は「FTP-75の走行パターンに合わせてスロットルを開閉する際には優等生モードで走行し、それ以外の状態で高負荷がかかると一気に不良モードになって有害なNOX満載の排ガスを撒き散らす、ただし燃料は完全燃焼させるため燃費は良い」というドライバーと試験機関を騙すのに特化したソフトウェアの可能性が高そうです。
http://shimesaba.dyndns.org/?p=24043
不正を指摘した論文によると、走行状況によってエンジンのモードを切り替えていたらしい。簡単に言ったら、試験中だけNOxを浄化するモードになってた。

この試験は競輪選手が屋内で練習する器具のように、ローラーの上に自動車を乗せてひたすら走らせるというもの。だからハンドル操作は一切しない。そこをプログラムでは自動的に検知。そういった場面でだけ限定的にNOxを浄化する仕組みだった。

つまり厳密には試験中だけNOxを浄化してたというより、NOx大量に排出させない仕組みだったと解釈した方が良さそう。VWは試験中だけエンジンの圧縮比を下げたり、できるだけ軽油を燃焼させないようにしてた?だから実際の走行でこれをやっちゃうと燃費性能や動力性能がかなり落ちちゃう。

でも日常的に運転する場合は、それとは逆。走行性能や燃費性能を高めるために、軽油(燃料)を完全燃焼させてた。要はNOxを除去してなかったということではなく、プラチナといった触媒では窒素化合物を吸蔵量には限度があるはずので、結果的にNOxを浄化しきれずに大量に垂れ流し状態だったらしい。

こんなことされちゃったら誰も気付けない。しかもVWは2014年12月に同じ問題でリコールを既に届けてしていたにも関わらず、実際には何も改修されていなかったらしい。うーん。ちなみにNOxの排出量を検査したのは、日本の堀場製作所の装置。

ディーゼルエンジン車の未来は不透明

やはり燃費性能や動力性能とNOx削減の両立は相反してるらしく、想像以上にディーゼルエンジンが抱える「NOx問題」の壁は厚かったということ。

フォルクスワーゲンは研究開発費が世界で一番。だからVWはディーゼルエンジンで世界トップの企業とも言えます。それがこういった不正を働かざるを得ないとしたら、クリーンディーゼル全体の信頼性が落ちるのも致し方ないのかも。

また、これを機にディーゼルエンジンに対して更に厳しい規制を課そうという声もヨーロッパではあるそう。ただ現段階の規制ですらろくに対応できていないのに、これ以上規制が厳しくなったら「乗るに値するクルマ」をちゃんと作れるのか?という疑問が。もちろん消費者の信頼を失ったという点でも問題ですが、そもそもディーゼルエンジン車を物理的に販売できない時代がやってきそうな心配も。

国内の外車の新車販売でメルセデスベンツに後塵を拝するVWですが、どうやら今すぐ挽回するのは厳しそう。フォルクスワーゲンは来年2016年に日本でクリーンディーゼルの相次ぐ投入を予定していましたが、きっと頓挫するはず。

ただメルセデスベンツやBMWといったメーカーも多くディーゼルエンジン車を販売しているので、国産車とは違って好調だった外車・輸入車の新車販売全体も下手すると落ち込む可能性も…。せっかくディーゼルエンジン車が面白くなってきた所なので残念です。

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