2016年10月14日金曜日

【考察】トヨタとスズキが提携して自動車業界の再編は起きるのか?

トヨタ自動車とスズキは12日、環境や安全、情報技術などの分野で業務提携の検討を開始すると発表した。
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016101200553&g=eco
2016年10月12日、衝撃的なニュースが発表されました。何とトヨタ自動車とスズキ自動車が業務提携を結ぶ予定らしい。おいおいトヨタ自動車の傘下には最近完全子会社化したばかりのダイハツ工業がいるはずではなかったのか!?

そこでトヨタとスズキが業務提携を結ぶことで自動車業界の再編が起きるのか、スズキがトヨタの子会社に入るのかなど色々と考察してみた。



基本的に大きな業界再編は起きない


結論から書くと、トヨタとスズキが業務提携を結んだとしても自動車業界内での大きな再編はまず起きないと考えられます。

何故なら、世界を見渡してみてもフォルクスワーゲン傘下のシュコダ(チェコナンバーワン自動車メーカー)など地域に根ざした自動車メーカーはありますが、やはりブランド自体は存続されてる。

既にスズキより先んじてトヨタはスバルやマツダと業務提携をしているものの、そのことが自動車業界全体の再編にまで繋がっていないことからも明らかでしょう。

やはりトヨタの社長も語ってますが「独占禁止法」がネックになるんだと思います。まだ百歩譲って外国メーカーだったらいざ知らず、軽自動車の販売台数はスズキとダイハツだけで全国シェアが6割7割ぐらいを占めている。

さすがに一社でそれだけ独占してしまったら問題にならないわけがない。だからといって業界全体の再編のために、スズキとダイハツのどちらかが国内市場から撤退する可能性もほとんどゼロに近いでしょう。

ということでスズキがトヨタの子会社になることはまずあり得ません。


スズキが得るメリット


まずはスズキのメリットを考察。

言うまでもありませんが、やはりトヨタのハイブリッドエンジンなどの技術力を提供してもらえることが最大のメリットでしょう。実際にスズキの会長(社長ではないのが何ともw)も「トヨタの技術力」と包み隠すことなく吐露しています。

最近スズキはイグニスやソリオといったコンパクトカーに力を入れているので、トヨタ・アクアに搭載されている1.5L直4ハイブリッドエンジンは非常に魅力的に写っていることでしょう。特にスズキは燃費不正を少しやらかしたこともあって、中身がトヨタ製なら消費者にも安心感を与えるはず。

逆にトヨタの立場で考えるとハイブリッドエンジンの販路を広げることが可能。

コンパクトカーという国内外に広がる市場の大きさや、またスズキはインドやヨーロッパでも好評を得ていることも考えたら、それはスバルとの業務提携のインパクトを超えるでしょう。また国内でスズキが結果的に日産やホンダと競合してくれたら万々歳ってもんです。

ダイハツが開発した新型パッソとスズキ・イグニスの比較記事を少し前に執筆しましたが、コンパクトカーとしての出来はやはりスズキの方が上といった感じ。トヨタは「コンパクトカーはダイハツを主体に開発」など言ってますが、いずれダイハツは軽自動車に専念させる可能性もゼロではないか。

トヨタ製エンジンを導入した、結果的にスズキ車が食われるんじゃないか?そういう心配もつい頭をもたげますが、そもそも自動車メーカーが全ての部品を開発してるわけではない。

むしろパワステや変速機や自動ブレーキシステムなど、国内外の部品メーカーから買ってることがザラ。そういったものの延長線上に今回のトヨタとスズキの業務提携があると考えたら、さしずめ大きな話でもないのかも知れません。

あとはトヨタ自動車と業務提携を発表した以上、スズキにちょっかいを出してくる自動車メーカーが極端に減るのもメリットとして大きい。

スズキはフォルクスワーゲンとの提携がご破産になりましたが、やはり日本企業と外資企業は風土が合わないことも多い。ガソリン関係で言うと、最近も出光興産と昭和シェル石油がゴタゴタしてます。

でもトヨタが結果的に守ってくれることで、スズキは安心して自動車の開発に専念できる。逆に考えると、スズキはトヨタの軍門に下るわけではないことが改めて分かります。

既にトヨタはマツダやスバルと業務提携を結んでいますが、この二者が子会社化される兆しは一切ない。そういった安心感も手伝って、スズキを後押ししたと考えられます。


トヨタ自動車が得るメリット


じゃあトヨタ自動車がスズキと業務提携するメリットは何なのか?企業規模を考えたら、トヨタがスズキを取り込むメリットは少なそう。ましてや既にダイハツ工業を完全子会社化している以上、わざわざスズキの手を借りる理由はなさそうに見えます。

結論から書くと、自動車に関するルール作りを主導できるメリットがある。実際トヨタの社長は「今後のエネルギー問題や環境問題を考えると、1社でやれることは限られている。協調や標準化について協議していく」と語っています。

具体的に言うと、ハイブリッド車・プラグインハイブリッド車やFCV(燃料電池車)に関して、各自動車メーカーがバラバラのルールを共通化させていこうってことです。例えば既にスズキも二輪車用のFCVを開発中で2020年に市販される予定。でもトヨタのFCV「MIRAI」と仕組みや水素の充填方法が異なるらしい。

でも、これらのルールや仕組みが共通化されることで、今後普及が予定されている環境対応車に対応したインフラ整備を円滑にすすめることが可能。インフラ整備が進めば、当然FCV車の普及も進むはず。

そのことで結果的にトヨタの莫大な利益に繋がる。既にトヨタはMIRAIに関する特許も公開してる理由もそこ。

だからトヨタは今回スズキと業務提携を発表したものの、本来は一足飛びで更に企業規模が大きい日産自動車やホンダ自動車と手を組みたいはずなんです。でもトヨタも日産もホンダもお互いにメンツがあって難しい。

だからトヨタとしてはまずは中小メーカーを囲い込んでいる状態って感じなのかも知れません。

しかしトヨタがここまで業務提携を進めていくと、果たして日産自動車やホンダ自動車は一体どういった策を講じてくるつもりなんでしょうか?もしかすると日産とホンダが手を組む日も来るのか?

ちなみに新車ブログ・カーギーク【最新版】自動車業界 相関図一覧まとめなどもご参照ください。

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