新型エスティマのフルモデルチェンジから約10年経過しますが、全高が1745mmとノア・ヴォクシーよりも背が低いミニバンだからこそ、新型エスティマのスタイリッシュさに磨きがかかった。
でも忘れちゃいけないライバルが「ホンダ・オデッセイ」。同じく背低の高級ミニバンで、むしろ新型エスティマよりもオデッセイは更に背が低い。最近人気の軽自動車であるエヌボックスやスペーシアといった軽自動車よりも低い。
カートップ9月号 小林健 |
結論から書くと「やっぱりオデッセイの方がおすすめらしい?」。
【エスティマ】見た目は似てないがサイズはほぼ同じ【オデッセイ】
まずはエスティマとオデッセイの「外観デザイン」を比較。先程の比較画像を参照。
新型エスティマはデザインが変更されたといっても、先代の近未来的なエッグシェルデザインが相変わらず踏襲。まさに温故知新。ツートンカラーもミニバンぐらい車体が大きくても意外にしっかり映えます。
一方、オデッセイは今風のゴリゴリのフロントマスクが何とも購買意欲がそそる。1980年代1990年代風に例えると、新型エスティマはしょうゆ顔やフェミ男顔。オデッセイはソース顔といった雰囲気。
そこで両者の車体サイズを比較。
新型エスティマハイブリッドのサイズは4820×1810×1760mm(全長×全幅×全高)。
オデッセイハイブリッドのサイズは4830×1820×1685mm(全長×全幅×全高)。
全高以外はほぼ同じサイズですが、オデッセイの方が全高が7cmほど低め。
【エスティマとオデッセイ】価格や排気量などの違い
続いて「価格」の比較。
一般的な売れ筋であろうミドルグレード同士で比べてみたいと思います。とりわけどっちも高級ミニバンに属するため、最上級グレードも装備を多く充実させれば価格は青天井。
まずは新型エスティマの価格。排気量2400ccエンジンを搭載した「エスティマ アエラス(7人乗り)」の価格が314万円。ハイブリッド版の価格は419万円。
そしてオデッセイの価格。排気量は同じく2400ccエンジンを搭載した「オデッセイ アブソルートX ホンダセンシング(7人乗り)」の価格が328万円。
そのためオデッセイの方が割高ですが、実は優秀な自動ブレーキ(ホンダセンシング)が標準装備のためエスティマとの価格差はほぼない。しかも、オデッセイハイブリッド(アブソルートX)の価格は386万円とエスティマハイブリッドの価格よりも断然お安い。
またオデッセイのハイブリッドシステムは「ガソリンエンジンで発電してモーター走行する高性能タイプ」なので意外と高価なのかと思いきや、むしろトヨタのような旧来のタイプのハイブリッドよりお安いらしい。
「室内と内装の質感」はオデッセイがおすすめ
続いて新型エスティマとオデッセイの「室内空間の広さ」を比較。
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ただオデッセイの運転席シートはどこぞの高級ソファーを彷彿とさせるなど、明らかにエスティマより見た目からも座り心地が良さそうです。実際、マリオ高野という自動車ジャーナリスト曰く「総合力ではオデッセイが秀逸」とのこと。
一方、新型エスティマの運転席は「ホールド性は低いもののソフトでボリューム感に富む」と比較記事では評価されており、決して新型エスティマの乗り心地が特別悪いってことではありません。
ちなみに、エスティマはウォークスルーができないといったデメリットもあるため、ミニバン車としては注意したい所。最近ではウォークスルー機能は軽自動車でもあるぐらいなので、こういった点からもエスティマの車両設計の古さも読み取れてしまいます。
「運転のしやすさ」は新型エスティマがおすすめ
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結論から書くと、着座位置などは新型エスティマの方がオデッセイより高め。ドライビングポジション(アイポイント)の高さは新型エスティマが141cm、オデッセイが131cmなんだそう。
それだけオデッセイは低床設計で乗降性は抜群か。また下から舐めるような視界は車好きや運転好きを満足させてくれそう。だからミニバンと言うよりも、一般的な乗用車ライクに近い運転ができる。
一方、新型エスティマはアイポイントが高いことで、前方視界性が抜群。そのためオデッセイよりも、運転が苦手にほどおすすめしやすいはず。両者の違いは結構あるので、実際に購入を考えてる方は一度簡単に試乗してもいいでしょう。
走行性能や乗り心地はオデッセイが勝るが…
続いては「走行性能」や「乗り心地」の比較。
まずエスティマハイブリッドはアイポイントが高いため、前述のように見晴らしが最高。この反面として、どうしても腰高な感覚やロール感の強さは否めないものの、それでもグラッとした動きは慣れれば問題なし。
ただし、新型エスティマハイブリッドのエンジンのパワー感がなく、どうしても2トンを超える車重が足を引っ張る。例えば5名6名乗車の大人数で走行すると、エンジンが唸りっぱなしになってしまうかも知れない。
一方、エスティマハイブリッドの乗り心地はどうなのか?
今回新バルブを採用したショックアブソーバー(ダンパー)のおかげで、段差による衝撃で発生したシートのブルブルとした振動などが劇的に乗り心地は改善。足回りのしなやかさが増したおかげで、骨太で質感の高い乗り心地が味わえる。
しかしながら、あくまでMC前のエスティマと比較した話。やはりオデッセイと比較するとどうしても設計の古さは否めないのは難。
○オデッセイハイブリッドの走りはエスティマを上回るが…
オデッセイハイブリッドは、常に電動モーターで走行するためとにかく静粛性が高い点がおすすめ。
また速度コントロールが容易で、運転が苦手な人でも走りやすい。オデッセイは低重心設計であるため、操縦安定性の高さはエスティマの比ではないはず。一方、ブレーキはやや過敏に反応しがちな弱点も。
ワインディングロードやカーブが多い場所では、無駄なハンドル操作が減るなど車体の安定性は高め。車線変更・レーンチェンジ時では安心感はひとしお。きっと高速道路での走行は疲労感が薄いでしょう。
オデッセイハイブリッドは乗り心地も抜群。
二列目シートの比較は後述するものの、まさに「リムジン並み」と評価されることも。ハンドルの前後調整幅が大きいので、身体が大きいおデブさんでも小さい人でもハンドル操作がしやすいはず。
ただ反面、オデッセイはそのハンドルがとにかく重いのが難。特に、女性が運転する場合は気になるレベルという評判も少なくなく、もし奥さんやママさんがオデッセイを運転する場合は一度試乗しておいた方が良いでしょう。
あえて「女性が」と限定した場合は、まだ新型エスティマの方が運転しやすいかも知れない。
「ラゲッジ荷室」はオデッセイがおすすめ
続いてはミニバンに重要な「ラゲッジスペース・荷室」はどちらが広いのかを比較。
結論から書くと、オデッセイの荷室ラゲッジの方が広いです。
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下のオデッセイの方が広いのは一目瞭然。三列目シートを出した状態で1cm、格納時で10cm分も新型エスティマより上回ります。特に後者の場合、広さの違いが顕著。またラゲッジ開口高も新型エスティマの方が高いので荷物の出し入れはしづらいはず。
もちろん新型エスティマの室内や荷室の広さは必要十分ですが、敢えてオデッセイと比較すると見劣り感は否めません。やはり新型エスティマの基本設計が古いことが影響してるんだと思います。
だから見た目のデザインなど外側をいくら取り繕っても、エスティマの中身までは新しくならない様子。車両全体で新しく設計されてるオデッセイの方が有利という結果に。
二列目・三列目シートの使い勝手や居住性はどっち?
続いて「二列目・三列目シート」の比較。エスティマとオデッセイはどっちの実用性が高いのか?
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そのため新型エスティマもオデッセイも、どちらも使い勝手の点では同じです。一方、室内の広さはどちらかが特に劣っていることはなく、オデッセイは全高が低いものの室内空間の広さでは意外とエスティマに健闘してそう。
だから、結論としては甲乙付けがたい。
ただし、オデッセイの二列目シートの乗り心地は「リムジン並み」と評価されることもあるので、個人的に乗り心地なども含めると総合的にはオデッセイに軍配を上げたいと思います。
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やはり新型エスティマもオデッセイも居住性は高そうですが、記事のマリオ高野という方によれば、「オデッセイの方が座面長が長いのでゆったり座れる」との評価。確かにシートの厚みが異なるか。
またオデッセイの取っ手(アシストグリップ)の位置を比較してみると、新型エスティマより手前に配置されており、乗り降りする時はオデッセイの方が持ちやすく便利なはず
三列目に大人が乗る機会は少ないのかも知れませんが、そのため幅広い乗客に対応してるのはオデッセイの方かも知れません。
実燃費の良さはオデッセイハイブリッドがおすすめ
続いて「実燃費」の比較。エスティマやオデッセイはいくら高級ミニバンとは言え、基本的にはファミリーカーだと思うので実燃費は無視できません。
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例えば、高速燃費がエスティマハイブリッドが11.3km/Lに対して、オデッセイハイブリッドが13.6km/L。
また市街地燃費がエスティマハイブリッドが10.0km/Lに対して、オデッセイハイブリッドが11.3km/L。
高速+一般道を足した帰路(440km)の総合燃費を見てみると、更にオデッセイとエスティマの実燃費を比べると「約3.5km/L」の燃費差が生まれてる結果に。
ガソリン消費量で見てみると、オデッセイハイブリッドが27L。エスティマハイブリッドが34L。ガソリンがリッター120円だとしたら840円ですから、燃料費で更に換算するとこの違いがより体感できるはず。
しかも前述のように、新型エスティマハイブリッドの方が価格的にはやや割高。総合的なコストパフォーマンスで比較しても、オデッセイハイブリッドがエスティマハイブリッドを上回るという結果になりました。
○オデッセイとエスティマを維持費で比較するとどうなんや?
また「維持費」の面で比較。
結論から書くと、エスティマハイブリッドもオデッセイハイブリッドも維持費はほぼ同じです。
例えば、どちらもエコカーの免税対象。オデッセイは2000ccエンジンを搭載してるのでつい自動車税が安くなるのかなーと思っちゃいますが、税負担は同じ。燃費性能の違いを踏まえると、トータルの維持費はオデッセイハイブリッドが有利か。
ただガソリン車を見てみると、オデッセイに軍配。エスティマのエンジンは古いせいか一切の減税措置はないものの、オデッセイのガソリン車のみ自動車税40%、自動車重量税が25%ほど減税が適用されます。
しかしながら自民党政権はずっと増税しかしてませんから、この減税措置もいつ終了するか分かりません。もしオデッセイに買い時があるとしたら、まさに「今」といったところ。
ただし、2017年2018年以降の展開は現時点では不透明。
値引き額はどっこいどっこいだが…
ついでに「値引き額」を比較。
結論から書くと、オデッセイも新型エスティマもどちらも22万円から25万円前後とされています。高級ミニバンであることを考えたら、平均的な値引き金額と言えます。
ただ新型エスティマの基本設計は10年前から進化してないことを考えたら、エスティマの値引きはどちらかと言えば渋い部類に入りそうか。それでもエスティマが古い事実は変わらないので、頑張ってオデッセイを競合させて値引きをお願いするのが常道か。
自動ブレーキなど安全性能はオデッセイがおすすめ
最後は「自動ブレーキ」の比較。ミニバンはファミリーカーだからこそ欲しい予防安全機能。
新型エスティマの自動ブレーキは「トヨタセーフティセンスC」。一方、オデッセイの自動ブレーキは「ホンダセンシング」。どちらもメーカー名を入れた自動ブレーキですが、エスティマは赤外線レーザー+単眼カメラ、オデッセイはミリ波レーダー+単眼カメラ。
この時点でお分かりだと思いますが、普通にオデッセイのホンダセンシングの方が上です。
エスティマのセーフティーセンスCは対歩行者で停止できないものの、オデッセイの自動ブレーキは歩行者でも止まれる。オデッセイは全車速域の渋滞追従クルーズコントロールも備わる。
そもそも自動的にブレーキが作動する速度域からして全然違います。新型エスティマは高級ミニバンの部類に入るはずですから、何故こんなにしょぼい自動ブレーキを採用したのか理解に苦しみます。
いずれ新型の第二世代トヨタセーフティセンスが設定されるかも知れませんが、おそらく次期エスティマにフルモデルチェンジされるまで期待薄でありましょう。
【違い総括】エスティマとオデッセイの比較まとめ
以上、トヨタ・エスティマとホンダ・オデッセイの比較記事でした。
結論をまとめると、やはり中身的にはオデッセイが全般的に優れていると言えます。
オデッセイの価格は全体的に割高だと思ってたんですが、新型エスティマと比較すると意外とお安い。燃費性能の良さも加味すると、オデッセイハイブリッドは実にコストパフォーマンスに優れてる。
一方、新型エスティマはビッグマイチェンでテコ入れされてデザインはカッコ良くなったものの、どうしても基本設計は古いまま。オデッセイに後塵を拝する部分がどうしても多い。
オデッセイも2013年にフルモデルチェンジしたので決して新しい車種とは言えませんが、それでも10年以上前の自動車がオデッセイに勝つのは難しいでしょう。いくらエスティマのポテンシャルが高いとはいえ既に限度があります。
それでもエスティマにしかない「清潭な顔立ち」は魅力。新型エスティマはミニバンでは珍しいツートンカラーも導入されるなど、見た目の商品力は依然として高い。
トヨタだとノア・ヴォクシーなどの最近のミニバン車にはない雰囲気や出で立ちは端正そのもの。まさにエスティマには目立つけど目立ちすぎない「古き良きスマートな高級感」がそこにはある。
ちなみに【比較】アルファード vs ヴェルファイアや【比較】ノア vs ヴォクシーといった比較記事も興味があればご覧ください。
また新車総合ブログ「カーギーク」では 【ホンダ】新型オデッセイ フルモデルチェンジ最新情報まとめ、【トヨタ】新型エスティマ フルモデルチェンジ最新情報まとめなども既に執筆済みなので良かったらどうぞ。
でも残念ながら、どうやらトヨタ現行エスティマは2019年に販売終了になるらしい。