ベストカー5月10日号 |
画像はほぼ同車格のレクサス・GSとトヨタ・クラウン。果たして同じプラットフォームやエンジンを採用しているのか。はたまた値段や維持費が異なるのかなど検証したいと思います。
レクサスもトヨタもどっちも社長は同じ理由
まずはトヨタとレクサスを「経営面」から比較。
例えば社長。自動車メーカーだと日産のゴーン(現在は無職)など、割りとクセの強い社長が多いイメージ。
トヨタ自動車の社長は、ご存知の我らが愛すべき豊田章男(とよだあきお)ちゃん。積極的にメディアなどに出演しては、自らハンドルを握って自社ブランドをアピールされています。
じゃあ、レクサスの社長は誰なのかというと実は同じく豊田章男ちゃん。
何故なら、「トヨタ」はブランド名であり同時にメーカー名でもありますが、一方の「レクサス」はあくまで純粋なブランド名だから。つまり、レクサスはメーカー名ではありません。
だから、「レクサス独自の社長なる人」は存在しません。似たような関係にフォルクスワーゲンとアウディが存在するものの、フォルクスワーゲン社員やアウディ社員は存在しますが「レクサス社員」なる人も存在しません。
だから、トヨタ車を製造してもレクサス車を製造しても、おそらく給料や給与面で大きな違いは基本的にないはずです。ただディーラーの受付嬢さんは違うので、もしかするとレクサスの方が美人…に思えたとしたらそれはおそらく気のせい(笑)
興味があれば【最新版】自動車業界相関図一覧まとめもご参照ください。
共用部分が多いレクサスとトヨタ
続いては、具体的にレクサスとトヨタの車種同士を比べたいと思います。
ただ結論から書くと、レクサス車もトヨタ車も基本的に中身は同じ。
例えば、冒頭でも紹介した「レクサス・GS」と「トヨタ・クラウン」。
レクサス・GSはかつて日本国内では「アリスト」として販売されていましたが「Nプラットフォーム」を採用。そしてトヨタ・クラウンも同じNプラットフォームを採用してる。またエンジン面を比べてもほぼ同じ。
レクサスGSに搭載されている8AR-FTS型という2.0L直4ターボエンジンは、トヨタ・クラウンアスリートに。またレクサスGSの2.5L直4ハイブリッドは、トヨタ・クラウンロイヤルとアスリートに。レクサスGSの3.5L V6ハイブリッドはトヨタ・クラウンマジェスタに、といった具合。
実際に「レクサスGS200t Fスポーツ」と「トヨタクラウンアスリート GT」のカタログスペックを比較しても、やはり大きな違いは見られないことが分かります。車高や車幅など微妙に異なるものの、中身はほぼ同じと表現して良いはず。
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つまり、トヨタ車とレクサス車はほぼ兄弟車と言い換えてもいい関係性かも知れません。レクサス車がダサいと言われるのも、トヨタ車がダサいと言われるのも、実は根幹が同じだから?
レクサスは最高級車仕様の味付け
ただいくらプラットフォームや部品など共用部分が多いとは言え、当然レクサス車とトヨタ車に相違点もあります。
再びレクサスGSとトヨタクラウンを比較してみると、例えばスポーツグレードの設定の有無が好例。
レクサスGSには「GS F」というグレードが用意されてるんですが、クラウンには用意されてない。そもそも同エンジンを搭載していても、クラウンよりもGSの方が若干パワフルにアップチューンされてます。
他にもサスペンションも違います。前輪がダブルウィッシュボーン式、後輪がマルチリンク式と共通してるものの、レクサスGSは一般的な形状とは違って前後共にアッパー&ロアアームアルミ化されてる。
だから乗り味や走行安定性も異なります。
レクサスGSは乗り心地が重厚で、凹凸感はマイルドに伝わる。またタイヤの接地性が高く、走行安定性や快適性でもクラウンを上回る。静粛性でもレクサス・GSが上。逆にクラウンアスリートの場合は、スポーティーな走行性と操縦性に優れてる。
また内装を比較してもやはりレクサスの方が質感は高め。
シートの座り心地もレクサスGSの方がサポート性に優れており長距離ドライブ向け。一方のクラウンの内装は光沢感が強調されたデザイン。他にもアームレストが大きいなど、良くも悪くもクラウンは日本向けのデザイン。
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レクサス・ISとトヨタ・マークXにも乗り心地やハンドリングに違いがあって、ハンドリングは「シャープでガッシリ感のあるIS」が上回る。また路面の凸凹感もトヨタ・マークXはドタバタするものの、レクサス・ISはスムーズ。
意外と細かい部分での違いがいろいろ見て取れて、やはりレクサス車はトヨタ車より高級車仕様に仕上がっている印象です。逆にトヨタ車の方が実用性は高いと言えるのかも知れません。
レクサスとトヨタの価格差は最低でも100万円以上?
続いては「値段」の違い。レクサス車とトヨタ車の間にどれだけの価格差があるのか。やはりレクサス・GSとトヨタ・クラウンを再び比べてみたいと思います。
レクサスGSの価格は550~860万円。レクサスGS Fの価格に至っては1100万円。一方、クラウンアスリートの価格は388~610万円。クラウンロイヤルの価格は373~569万円。クラウンマジェスタは633~695万円。
そしてハイブリッドグレードのみで比較してみると、レクサスGS(GS300h)は615万円からに対して、クラウンハイブリッドは431万円から。つまりレクサス車とトヨタ車の間では100~200万円近い価格差があると推察できます。
思わず「どっひゃー」の一言。クラウンですら、かなり値が張るお車。それよりもレクサスGSの価格はそれを余裕で上回る。しかもレクサス車は値引きが期待できないことで有名。金利差もそこまでないはずですから、実際に支払う金額の差は更に大きいのかも知れません。
【レクサス】ディーラー数や販売台数・売上も違う【トヨタ】
ちなみに販売台数ではどうなのか。価格が高ければ、当然販売台数は反比例するイメージ。
結論から書くと、実際その予想通り。例えば、2017年2月のレクサス全体の販売台数が約3700台前後でした。一方、クラウンは一車種だけで販売台数は2140台。このことから販売台数全体で、トヨタ車がレクサス車を圧倒してることは言うまでもありません。
だからディーラーの数にも違いがあります。
レクサス店は全国で約170店舗しかないのに対して、クラウンを扱うトヨタ店だけでも全国に1000店舗近く存在します。それだけいかにトヨタの販売台数がレクサスより多く上回っているかが読み取れます。いくらレクサス車の車両価格が高いとはいえ、売上高などは比べるまでもないでしょう。
維持費ではほとんど差がないが…
続いては維持費の違い。結論から書くと、維持費は逆にどっちも大差ありません。
何故なら、前述のようにレクサス車だろうがトヨタ車だろうが根本は同じだから。エンジン排気量や車重、カタログ燃費といった実力差は同じ。だから税金関係や燃料費といった維持費の点では、レクサスもトヨタもほぼ変わらないはず。
でもどうして「ほぼ」なのかというと、割高な車両本体の価格や値段は任意保険の車両保険料に一般的に比例するから。つまり自動車保険料ではレクサスはトヨタよりも負担感が増すと考えられます。
良くも悪くも高級車なりの維持費の負担を相応に求められるのが、トヨタよりもレクサスということ。とはいえ同車格のトヨタ車でも十分すぎるお値段ですから、ここらへんのクラスの車を購入する人にとっては大して気になる違いにはならないでしょう。
トヨタ車とレクサス車の車種別の相関関係一覧
改めてトヨタ車とレクサス車の車種別の相関関係をまとめておきます。ある意味、どの車種とどの車種が兄弟車なのか。
まず最小コンパクトのレクサス・CTはトヨタ・プリウスと兄弟車。ただし先代モデル。レクサスCTはそろそろフルモデルチェンジするウワサもありますが、そこまでのらりくらりと先代プリウスで乗り切るつもりらしい。
先代プリウスがベースなので一概に比較できないものの、両者の価格差は最大240万円。廉価グレード同士で比べると120万円以上の価格差があります。
レクサスHSとトヨタSAIは、見た目的にもあまり違いが見られません。パワーユニットに関しても古い2.4Lハイブリッドを搭載するなどほぼ同じ。価格差は最大240万円以上。廉価グレード同士で比較しても約100万円の違い。これだとさすがにレクサスHSは購入しづらいか。
ちなみに、レクサス・HSや前述のレクサス・GSはレクサスES(復活ウィンダム)の国内再投入に伴ってお役御免とばかりに消滅するとかしないとか。
続いてレクサスのSUV車。まずは最高級車クラス。
レクサス・LXとトヨタ・ランドクルーザー200の関係は有名か。どちらも3列シートを採用してるものの、雰囲気が全く違います。レクサス・LXのギラギラ感がハンパない。ランクル200もかなりのお値段がするものの、価格差は最大600万円以上。
レクサス・NXはトヨタ・ハリアー。
ハリアーはレクサスRXとして海外で発売されていたものの、あくまで現在相関関係があるのはNX。どっちも売れてる人気車種ですが、デザイン的にはどちらも落ち着いていて雰囲気的には似てる印象。
ハリアーとNXは最大で290万円程度の価格差があります。廉価グレード同士で比較しても価格差は170万円。
2017年4月時点では発売されていませんが、ラストはレクサス・UX。詳細はリンク先を参照していただくとして、レクサスから近々発売される最小コンパクトSUV。レクサスNXより小さい。
このレクサスUXと兄弟車の関係になるのが、今最も勢いのあるトヨタ・C-HR。本当に良い意味で対照的。きっとレクサスUXは同様に人気に火がつくはず。まだ未発売ということで価格差は不明。
今後もトヨタやレクサスはフルモデルチェンジ or 新型車の投入は相次ぐと思いますが、それでも相関関係そのものは大きく変わらないはず
更なる差別化にはレクサスの別会社化は必須?
ラストはレクサスの戦略と課題について、簡単に考察したいと思います。
前述のようにトヨタもレクサスも社長は同じ豊田章男。フォルクスワーゲンとアウディの関係とは違って、あくまでトヨタ車もレクサス車も根本は同じ。だから良くも悪くもレクサス車には「トヨタ色」がにじみ出る。
もちろんブランドの方向性を統一しやすかったり、車内の意思疎通や意思伝達を効率化できるものの、一方で自ずとブランド戦略や差別化戦略に限界も見えてくる。やはり同じ社内の人間が作る以上、レクサス車は「トヨタ車の高級版」という域や立ち位置を抜け出ない。
そこでレクサスを完全に切り離して別の会社として運営した方が、より最高級車ブランドとしての地位を確立できるのではないか。画像は「せめてレクサスを完全に別会社にして本社を東京に置くべき」というのが、鈴木直也という自動車評論家さんのご指摘。
高級車ブランドではありませんが、実際ダイハツは完全にトヨタの意思から離れて長年経営されていた。最近でこそ完全に子会社化されたものの、もしトヨタの強い影響下のもと経営されていたら、ここまで軽自動車ブランドとしての地位を確立できてなかったでしょう。
個人的に「レクサス in トヨタ」にそこまで大きな問題や課題を抱えてるとは思いませんが、確かに餅は餅屋という言葉もあるように「高級車ブランドは高級車メーカー(の人間)が作るべき」なのかも知れません。
以上、どうでもいい考察もありましたが、一言で簡潔にまとめると「ほぼ同じ」という結論になります。
ちなみに試乗ブログ「カーギーク」の【評価】レクサス新型UX 試乗感想まとめや【評価】レクサス新型ES 試乗感想まとめなども興味があればご参照。