ただそこでふと疑問に思ったのが、「自動車のテレビCMに宣伝効果はあるのか?」ということ。自動車業界関係図最新まとめなども執筆したことがある管理人としては、今回長めの考察記事を書いてみました。
テレビ視聴率の低下
そもそもテレビを観てる人がどれだけいるのか?若者のクルマ離れが叫ばれて久しいですが、それ以上にテレビ離れが起きてるのが現実。http://blog.goo.ne.jp/fmdwtip03101b/e/deb24b53cc14ccaf40c0c0291501c33a |
http://www.videor.co.jp/data/ratedata/backnum/2015/vol51.htm |
http://www.videor.co.jp/data/ratedata/backnum/2013/vol51.htm |
つまり2年で4.2%分も視聴率が減少しています。関東地方の人口は4260万人いるらしいので、たった2年あまりで約180万人ぐらいが『笑点』を観なくなった計算。
トップのバラエティ番組でもこんな有様ですから、他のバラエティー番組については推して知るべしでしょう。実際に全体的に視聴率がグンと下がってます。
産経新聞12月25日 |
関西圏の人口は三重県の人口(180万人)を除くと2000万人ちょっと。視聴率10%でおよそ200万人。インターネットのサイトやブログでも探せば、これぐらいの規模で運営してる人はザラにいます。
テレビCMはたった15秒
しかもテレビ番組を真剣に食い入るように視聴してる人は少ない。すっかりテレビを点ける機会はめっきり減りましたが、テレビを点けていても「ながら見」が多い。例えば、自分の場合だとブログの記事作り。主婦さんだと洗い物、若者だとスマホいじり。特にスマホは最たる例ですが、もはや全くTVCMを観ていないと言っていいレベル。
またテレビCMは「たった15秒」と流れる時間がめちゃめちゃ短い。まさに一瞬。誰かと他愛もない話をしてるだけで、あっという間に過ぎてしまう時間。だからこそテレビCMは繰り返し流されるんだと思いますが、それでも視聴率の低下や「ながら見」の増加に伴って、テレビCMが視聴者の目に触れる機会は少なくなってるはず。
今後、30秒単位や1分単位が基本になれば別なんでしょうが、テレビCMの宣伝効果はハッキリ見えない部分が多い。
自動車は商品数(車種)が多い割に…
ここまでは一般論に終始した感がありますが、そもそも自動車は車種が多い業界。「商品数」や「選択肢の数」と言い換えることも可能ですが、おそらく全メーカーで100車種200車種あります。輸入車や外車を含めると、更に増えます。でもその割に一モデルあたりの販売台数は少ない。例えば、トヨタ・アクアやホンダ・N-BOXがコンスタントに毎月1万台をやっと超える程度で、その他の車種は毎月7000台も販売できたら御の字レベル。
毎月の販売台数が数百台なんて車種もザラですから、一車種ごとに大金をかけて数百万人規模でバンバン宣伝をする意味があるのか?例えば、スバル・エクシーガ クロスオーバー7のテレビCMを自分は不思議と見かけるんですが、クロスオーバー7の2015年11月の販売台数はたった294台。さすがに可哀想なレベル。
自動車産業は数十兆円規模とかなりデカイんですが、実はチリも積もれば山となってるだけ。頑張っても毎月数千台も販売できない車種(チリ)をいくら数百万人規模の不特定多数に宣伝したところで、それ自体が山になるわけではない。
ましてや、車種あたりにかけられる広告費の総額も限られてるはずですから、テレビCMを流せる本数だって限られてきます。前述のようにテレビCMはたった15秒ですので、中途半端にテレビCMに広告費を投資した所で知名度が上がるわけがありません。
つまり言っちゃえば、テレビCMは無駄撃ちが多い。費用対効果を考えると「テレビCMに向いてる車種」は少なく、もっと言えば、自動車ほどテレビCMに向いてない商品もないわけです。少なくとも、車種ごとのテレビCMをバンバン出稿することほどムダで非効率なものはありません。
若者はテレビを見ていない
自動車メーカーが作ったテレビCMを見ると、明らかに若者向けを狙った内容も散見されますが、そもそも若者はテレビを視聴してるのか?という疑問があります。http://www.garbagenews.net/archives/2059804.html |
例えば、視聴率が10%のテレビ番組があったとしても、20代30代のユーザーが10%もテレビを観てるわけじゃない。50代60代以上の視聴者がその数字を牽引してるんであって、若者に限定すれば更に数は減る。
自動車メーカーが若者のクルマ離れを嘆くのがもはや儀式化してますが、そもそもテレビCMをバンバン流した所で肝心の若者には届いてない。最近は視聴率1桁の番組ばかりですから、なおさらアプローチとしては的外れと言えます。まだそこら辺のユーチューバーの方がよっぽど影響力はあるでしょう。
インターネット広告ほど最適なものはない
新車の価格は基本的に最低でも100万円以上。売れ筋モデルやグレードとなると、平気で200万円以上を超えることもザラ。それだけ新車は「大きな買い物」。それだけ購入する機会は限られてくるので、常に興味を持ち続ける人は少ない。自分のようにブログでも書いてりゃ別ですが。例えば、先頃閉幕した東京モーターショー2015の入場者が減少した理由でも言及しましたが、最近は景気が悪いから大きい買い物をみんなしたがらない。結果、TMSの入場者数が減った。逆にいうと「新車を買おうという強い意志」がなかったら、絶対に消費行動には繋がらないということ。
つまり「新車を欲しいと思ってない人」に対して、いくら宣伝しても効果はない。
マンションや一戸建てが好例ですが、全く興味がない消費者が偶然見た広告に購買欲が刺激されて、それらをフラッと購入する人は皆無に近い。常識的に考えるまでもなく、自動車は数百円のお菓子や食料品とは違う。一自動車企業がテレビCMをいかばかりか出稿したところで、消費者全体の新車需要を喚起するのは不可能。
でも逆に考えると、新車に興味がない数百万人にアピールするより、新車に興味がある数万人にアピールした方がよほど効果的とも言えます。要は新車の広告宣伝費にお金をかける場合、既に「既に自動車を買いたいと思ってる人に、どれだけタイミングよくアプローチするか」が重要になってくると思うんです。
例えばミニバンを欲しいと思ってる人に対して、セダン車を宣伝しても効果はない。でもミニバンを購入したいと思ってるユーザーに対して、トヨタだとノアやヴォクシー、ホンダだとステップワゴン、日産だとセレナといった具体的な車種をアピールすれば購入に繋がる可能性は高い。
でも前述のようにテレビCMは無駄撃ちが圧倒的に多いですから、じゃあ何が残ってるのかと考えると、読者層がハッキリしてる自動車雑誌やインターネット広告。特にインターネット広告はユーザーの興味を把握することができるので、より効果的なアプローチが可能。
つまり自動車の宣伝活動・広報活動に、インターネット広告ほど最適なものはない。自動車は高い買い物なので、事前にネットで調べる人が圧倒的に多い。新車・中古車を調べてる=新車・中古車に興味があるということですから、そういう人に対して行う宣伝効果は絶大。
もちろんテレビCMが意味がないとまでは思いませんが、TOYOTOWNのような「メーカーそのもの」をアピールをした方が効果的でしょう。クルマに興味がない人はメーカー名すら知らない人も多いので、一つ一つの細かい車種をアピールしたところで覚える前にCMが終わるのが大半でしょうから。
ちなみに最新自動車ブログ「カーギーク」の【最新版】自動車業界関係図まとめなども参考に読んでください。