2015年11月19日木曜日

WLTPモードとJC08の違いって何?カタログ燃費は悪化する?



2015年11月現在、カタログ燃費に表示されてるのは「JC08モード」という試験方法で算出されたもの。ただし2018年度からは、このJC08モードに変わって別の燃費試験方法が新たに導入されます。

その名もWLTPモード!!

そこで今回の記事ではWLTPモードの詳細を解説しつつ、「WLTPモードとJC08モードの違い」の観点からも多角的に考察してみたいと思います。

最近フルモデルチェンジされたトヨタ新型プリウスが燃費40km/Lを達成しましたが、果たしてどうなってしまうのかッ!?もしかすると免税も無くなる?



WLTPモードとは?


WLTPモードとは、「ワールドハーモナイズド・ライトビークル・テスト・プロシージャ(Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedures)」の頭文字を取った略語。直訳すると「国際的に基準調和された乗用車のモード試験」という意味。

現在、日本のカタログ燃費はJC08モードで算出されてますが、アメリカではLA4モード、ヨーロッパではNEDCモードと実は各国バラバラ。

でも、このバラバラな燃費測定方式を各国で統一しようとしたのがWLTPモード。ちなみにWP29(自動車基準調和世界フォーラム)という自動車に関する基準の承認の国際化を進めてる国連の分科会の一つが策定しました。

だから、これまでは海外のカタログ燃費を紹介しても、日本基準のJC08モードで計測すると大きなズレがあった。

このブログでも「日本とはモードが違うだろ」というツッコミも頂いたことがありますが、WLTPモードは日本以外でも導入される国が増えていくので、そういった混乱はほぼ減る予定。自動車メーカーさん視点でWLTPモードを考えると、これまで各国別々で行っていた燃費測定コストを減らせるメリットがあります。

そして冒頭でも書きましたが、このWLTPモードは日本では2018年度から導入されます。ただし2022年度までは暫定的にJC08モードを使っても良いらしいですが、基本的に2018年後半からはWLTPモード表記の義務化がされるっぽい。

ちなみに、このWLTPモードより更に厳しいのがRDEモード。今説明したWLTPモードの応用verで「スピードの加減速」までランダムで要求される内容。もしこのモードが導入されれば、日本でもPHEVが加速度的に普及させざるを得ない未来も読み取れます。



WLTPモードではアイスト時間を減少させるなど試験内容が厳格化


WLTPの測定試験の詳細を見ると、4つの走行フェーズが用意されてます。①ローフェーズ(60km/hまでの市街地)②ミドルフェーズ(80km/hまでの一般道)③ハイフェーズ(100km/hまでの都市高速)④エクストラハイフェーズ(130km/hまでの高速道路)。

じゃあ現在のJC08のモード数はというと、WLTPにあたる①と②だけ(多分)。ただし日本では道交法の関係上で④は除外される予定なので、WLTPとJC08の実質的な差は③のハイフェーズによるもの(多分)。先程「混乱は【ほぼ】減る」という表現に留めたのは、このため。

WLTPモードとJC08モードとの違い
国土交通省
どれだけ両者が違うのかというと、WLTPモードでは走行距離は15.01km、平均速度は36.57km/h、走行時間は1477秒(約25分)。一方、JC08モードでの走行距離はわずか8.17km。平均速度は24.41km/h。走行時間も1200秒(20分)。ちなみに日本は「Class 3b」の計測方式。

しかもアイドリングストップの時間もJC08モードでは多かった。ここで燃費を地味に稼いでいた車種は多いはずですが、WLTPモードはアイドリングストップ時間が半分近くも減少します。

画像には載ってませんが、WLTPモードでは更に計測時における積載率もアップされて車両重量も増加されます。

WLTPモードはステップレス化
またJC08モードでは「何10kgごと」と大まかにカテゴライズして計測してたんですが、WLTPモードではステップレス化。逆に車重を重くした方が低燃費化してしまう珍現象ですが、今後は無くなりそう。

つまりWLTPモードの導入で、自動車メーカーさんにとってハードルが上がりますが、ドライバー目線で考えると「カタログ燃費がより実燃費に近くなる」ことになります。


WLTPモードはハイブリッドほど燃費が悪化?


そこで一番気になるのが「WLTPモードで実際にどれだけカタログ燃費が下がるのか?」ということ。

WLTPモードはJC08モードよりカタログ燃費は下がらない?
https://www.mlit.go.jp/common/001094146.pdf
ただ国交省の試算では、なんとJC08モードと差が生まれない車種が大半。10・15モードのときは全体的にグーンと下がりましたが、これは意外な結果。先程は「JC08と併記されるかも?」と書きましたが、いきなりWLTPモード単独で表記される可能性も高そう。ちなみに画像は横軸がJC08、縦軸がWLTP。斜めの直線に近いほど燃費は下がらないことを意味してます。

でもカタログ燃費がグーンと下がってる車種もあって、それがハイブリッドカーと一部の軽自動車

車種名は書かれてませんが、JC08では30.0km/Lだった某ハイブリッドカーではWLTPモードだと25.0km/L以下まで減少してます。35.0km/Lに近い軽自動車もWLTPでは30km/Lを優に下回ってます。

国交省の分析では、アイストの減少と車両重量の増加が理由として挙げられています。

つまり冒頭でも触れましたが、トヨタ新型プリウスやアクア、ホンダ・フィットあたりのカタログ燃費はWLTPモードではグンと下がる可能性がやはり高そうです。手厳しい見方をするなら、これまでそういった車種はかなり無理してカタログ燃費をアップさせてたことが読み取れます。

確か自動車取得税の廃止の代わりに出てきた悪しき「環境税」は、WLTPモードとほぼ同じタイミング(2018年度前後)に導入される予定。環境税とは、燃費性能の差によって税金が重くなるというもの。ハイブリッドカーは今のところ免税予定ですが、WLTP導入で意外にピンチかも?


日本に導入されたのはWLTCモード


ただ、ここまで長々と解説しておいて非常に恐縮ではあるんですが、実は日本国内で導入されたのは「WLTCモード」と呼ばれるもの。今回のWLTPモードとは若干異なります。

一応WLTPモードとほぼ内容は一緒なものの、日本では法律上時速120km/hを超えるフェーズでは燃費を計測できないため、そこの燃費値がWLTCモードでは除外されてるカタチ。だから海外で使われるWLTPモードとほぼ同じと考えていいと思います。

ちなみに当ブログもおすすめ自動車サイト「カーギーク」に引っ越し済み。そこでは「WLTCモードのカタログ燃費達成率はどんなもん?」という記事も執筆済みなので、もし興味がある方は読んでみて下さい。

結論から書いておくと、現在のJC08モードよりはWLTCモードは優秀らしいです。