2015年5月5日火曜日

鈴木修会長発言から考える軽自動車の未来



鈴木修会長の語録から考える軽自動車の未来
「敵はVW、世界で競争 本社浜松のハンディなし」鈴木修会長兼社長
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150502-00000501-biz_san-nb&p=2
あるインターネット記事で、スズキ自動車の会長・鈴木修さんが吠えてました。相変わらず、歯に衣を着せない内容(笑)

今日はこどもの日だからというわけではないですが、そこで鈴木修会長の発言から軽自動車の未来を何となく考えてみた。

軽自動車は庶民の乗り物?

東京なんかで軽(自動車)乗ってないでしょ。山奥の人が軽を使ってる。
初っ端から大胆なことを主張してる鈴木修会長。

田舎の軽自動車の普及率
http://www.zenkeijikyo.or.jp/topics/1312fukyuu.html
そこで軽自動車の保有台数や普及率を見ると、確かに上位県は「山奥」らしい都道府県が多い印象。イメージだけで言うと、長野県や山形県はまさにTHE山奥って感じw

東京などの軽自動車の普及率
http://www.zenkeijikyo.or.jp/topics/1312fukyuu.html
そして都会の軽自動車の保有台数を見てみると、やはり最下位を占めてる。だから一見、鈴木修会長の発言は正しいように聞こえる。

でも実は、東京都の自動車保有台数そのものが少ない。軽自動車がどうとか関係なく、そもそも東京に済んでる方は自動車を保有してない。

何故なら、電車だったら乗り過ごしても数分あたりで次の新しい電車が飛び込んでくる。バスもいわんや、それだけ自動車以外の公共交通機関が発達してる。正直、車を買わなくても日常生活で苦労しない。

それに東京の普及率はたった10%足らずですが、人口の多さを考えると十分すぎるほどの数。別に都内の23区ばかりが東京じゃないですし、福岡県や愛知県でも普及率は50%。100万台以上は走行してる。それらをもって「軽自動車は庶民が買うもの」という認識を持つのは危ないと思う。

また立体駐車場に駐車するには全高1.5M以下である必要がありますが、軽自動車もコンパクトカーも平気で1.7M近くある車種も多い。だからメーカーさん自身が、そもそも都会で軽自動車を普及させようという意識が少ないのも一因のはず。

庶民はコンパクトカーが欲しい?

小型車が欲しいんだけれども、お父さんが乗ってるから2台は買えないっていうことでお母ちゃんが子供の用事だとか、ご両親の、おじいちゃんおばあちゃんの使い走り、病院へ行くとかね。そういうことに使ってらっしゃる」
あと気になった発言が、「庶民はコンパクトカーが欲しいけど、軽自動車をやむなく買ってる」という発想。

でも実際には、軽自動車とコンパクトカーの価格帯は遜色がない。それぐらい軽自動車の価格帯は年々上昇してる。例えば、軽自動車のスペーシアが126万円から購入できるのに対して、コンパクトカーのスイフトの価格は131万円から。この価格差で悩む人はきっと少ない。前に大学生・新社会人におすすめな車選びという記事でも言いましたが、むしろ中古車ではコンパクトカーの方がお手頃価格で購入できることが多いぐらい。

それにも関わらず軽自動車が人気ということは、単純に軽自動車に商品としての魅力があるから売れてるということ。言っちゃ悪いですが、正直スズキに限った話ではないですが、そもそもコッチが欲しくなる小型車は少ないのも現状。実際、コンパクトカー(ハイブリッドカーやディーゼルカーは除く)の新車販売台数を見てもあまり芳しくはない。

軽自動車は安かろう悪かろうではない

自動車の価格が安くならない理由でも書いた気がしますが、自動車の売れ筋価格帯はどんどん上昇してる。どうやったって昔のように低価格で軽自動車を作れる時代ではない。

そもそも5万円10万円高くなったからといって、クルマは買われなくなるような買い物ではないと思う。消費税増税などの要因は別ですが、自動車の価格上昇にはしっかり理由がある。例えば、自動ブレーキが搭載したなど、商品力のアップも同時に伴ってることが普通。価格の上昇がイコール商品としての価値を下げるという裏返しではない。

また軽自動車で「安さ」を追求すると、どうしても「安っぽい」クルマになっちゃいがち。5万円10万円を安くするために、同時に「安っぽさ」が生まれるなら本末転倒。そんなクルマをわざわざ新車で買おうとは思う人は少ない。結局、安さだけを追い求めるなら中古車に流れるわけだから。これはきっと海外市場でも同じ。

だから「安かろう悪かろう」という自動車作りの発想は止めるべき。実際、自動ブレーキといった安全性能面では、軽自動車はコンパクトカーよりも間違いなく充実してる。ダイハツ・ムーブだと初めてそれを搭載して爆発的に売れた。

最近はカーリースや残価設定型クレジットという自動車ローンもありますから、いくら価格が高くても買おうと思えば庶民でも300万円ぐらいの新車だって購入可能?そういうクルマ作りを軽自動車でも行うべき。

高齢化時代の軽自動車

 --地方で高齢化が進めば、軽の運転もままならなくなる
 「だから、今の時代はいいけども、10年先に広い意味における自動車というもの。それから、狭義における軽の将来というものをどう考えるかということ。今の若い人はそういう経営感覚がないからね。
じゃあ軽自動車は、10年先20年先の未来はどうなるのか?という鈴木修会長の問いかけがあった。

確かに高齢者自身が自動車に乗ることは難しくなる。60代70代は問題なくても、さすがに80代になってくると視力や運動能力が否が応でも落ちてくる。でも鈴木修会長自身もおっしゃってますが、「おじいちゃんおばあちゃんの使い走り、病院へ行く」で利用する必要性や状況は10年先でも変わらない。

つまり高齢者が自分で運転する可能性は減ったとしても、高齢者が「自動車そのものに乗る」という需要は減らないはず。電車やバスがライバルになりそうですが、電車は乗りこむまでに階段があったり距離がありすぎる。そもそも駅に行くまでが大変。バスは段差が高くて乗り込むのが大変で、そもそも田舎だと運行回数が2時間に一便あればいいぐらいで使い勝手が良いとは言えない。

結局、高齢者が頼りにするのは10年後も20年後も「自動車」。タクシーのミニバン化も進んでますが、スペーシアのようなスライドドアタイプの軽自動車やプチバンは、未来でもきっと人気で需要があるはず。特に都会の路地は入り組んでて狭い。室内は広くて、燃費もそこそこなど使い勝手が良い。送迎車や福祉車両的にも使える軽自動車は、むしろ今後もさらに進化していくはず。

軽自動車の未来はアップサイジング

最近は、ダウンサイジングターボなど小排気量化が世界的に主流。国産メーカーでもハイブリッド以外の選択肢として、どんどんエンジンの小型化が進んでます。最近だとトヨタのオーリスの1.2Lターボエンジンホンダのフリードも1.0Lターボエンジンを積む予定もあるとか。

http://www.mlit.go.jp/common/000986236.pdf
でも、その行き着く先の未来としてよく想像されるのが、自動車の車体もどんどん小さくなって、二人乗り化するというアレ。いわゆる、国交省が提案してる「超小型モビリティ」。最近だとヴィッツ風のレクサスがまさにそれを予期させてますが、国が求める燃費基準を満たすために発売自体はされても、個人的にそれが消費者にウケるとは考えにくい。

何故なら、前述のように「安っぽい新車は売れない」んですよね。それと同じように、消費者は2人しか乗れないクルマをそこまで無理して買わないはず。言っちゃえば、2人乗りの自動車なんて、屋根付きのバイク。もし低価格+移動手段だけという方向性が売れるなら、既に原付バイクや中型バイクがもっと人気でいい。

だから、逆に軽自動車はアップサイジングしていく可能性は高いと思う。軽自動車税などもアップしたりしてますが、「超小型モビリティ」を作るんであれば、将来的には当然軽自動車の枠組みも変える法改正はありうる。

その超小型モビリティは高速道路を走行できないなど、国交省が本気で普及させようと思ってるとは考えにくく、どちらかと言えば軽自動車をコンパクトカーに近づけて税収を増やそうと考えてると思う。

つまり、もちろんダウンサイジングも大きな主流ですから、一定の車体の大きさやエンジン排気量に収斂していくことが予想できます。もっと長期的なスパンで考えると、軽自動車もコンパクトカーも差がなくなっていく可能性は高い。例えば、軽自動車の排気量だと800ccぐらいまでは増えそう。そうすれば海外での展開もしやすくなるはず。

まとめると、自動車としての性能や機能をシンプルに追及していくのが、軽自動車メーカーとしての一番の王道であり近道だと思う。どのみち現地点ですら都会で軽自動車が流行ってないとしたら、少なくとも、それ以上にコンパクトな自動車が売れないのは間違いないはず。だから軽自動車の更なる小型化を進める方向性を考えてるとしたら正直どうかなーと。