2015年4月26日日曜日

自動車の価格が安くならないワケとは?



燃料電池車の価格が高い理由を記事に書いたので、自動車の価格そのものが安くならない理由も考察してみたいと思います。

自動車の価格が安くならない理由とは?
例えば、ダイハツの軽自動車・ムーヴ。2000年代前半だと価格は80万円台だった。つまり今のミライースとあまり変わらない。でも現在では110万120万は当たり前。ただ、いわゆる軽自動車の高級化路線は最初ワゴンRが火付け役だった気がしますが、とにかく最近のクルマはモデルチェンジするたびに価格が徐々に上昇していってる。

じゃあ何故自動車の価格が安くならないのか、むしろ価格が上がっていく一方なのかを考えてみた。



資材価格が高騰

まず第一にシンプルな理由としては、自動車の車体などに使っている資材価格の高騰が挙げられると思います。

鉄鉱石だと1980年には1トンあたり12.15USドルだったのが、2014年は96.84USドル。特に2000年代に入ってからの価格上昇がエグい。天然ゴムの価格は最近落ち着いてるようですが、銅でも30年ちょっとで倍以上。

これは中国経済と密接にリンクしてる。世界的に労働者の年収がアップすると、当然自動車そのものへの需要が高まる。実際、既に中国のクルマ市場は世界一。毎年2000万台近く売れてる。

そうすると自動車へ使う原材料(鉄鉱石や銅、天然ゴム)の需要が高まって、必然的に価格も上昇していくという流れ。最近の中国経済はやや落ち着いてきたので、資材価格も連動して落ち着いてきてる。ただ長期的に考えると、鉄鋼や銅など資材価格が数十年前のように下落することもないはず。

車開発の研究費は3兆円

あとは自動車メーカーの研究費が3兆円以上ということも大きい。その記事にも書きましたが、研究に明け暮れてるイメージしかない製薬メーカーのほぼ二倍。いかに自動車メーカーがかけてる3兆円という研究費が膨大かが分かります。

それらの研究費は回収しなきゃいけないので、当然3兆円もの金額は車両価格に転嫁されてる。もちろん国内向けの車に全て反映されてるわけではないんでしょうが、日本専売に近い軽自動車ではそれらの研究費がダイレクトに価格に転嫁されてる。

軽自動車は庶民の足として親しまれてはいますが、そりゃムーヴやワゴンRやNシリーズの価格が100万円を余裕で超えるはず。

燃費性能向上のための技術向上

それらの研究費がどう使われているかというと、メインはエンジンの性能向上。

環境負荷低減が法律的に求められてるので、燃費性能の向上は避けられない。必然的に高機能なエンジンに進化せざるを得ない以上、安物のエンジンは淘汰される。燃費面の向上では新型プリウスだと「TNGA」といった骨格プラットフォームなど、車体の軽量化も避けられない。

特に2011年頃に登場したダイハツのミライースが火付け役となって、各社メーカーの燃費競争が顕著に激しくなった。ハイブリッドカーではトヨタ・アクアが同年に発売されて、燃費競争が苛烈になった。前述の車メーカーの研究費ですが、ちょうど2011年頃から他の業種を抑えてトップに躍り出たので、まさに車メーカーが力を入れてる部分なんだと思います。

ちなみにミライースとアルトの実燃費を比較した記事はこちら

ハイブリッドカーはエンジン以外にも、バッテリやモーターを積んでる。また最近は軽自動車ですら、バッテリーを搭載した擬似ハイブリッド化も進んでる。スズキのワゴンRやアルト、スペーシア。これでは価格を安くしようがない。

安全装備の充実

また自動車としての性能向上だけではなく、安全装備の標準化も大きい。例えば、一昔前二昔前はエアバッグやABSが搭載されてない自動車も多かった。でも今現在では軽自動車でもサイドエアバッグを搭載する車種もある。

特に最近だと自動ブレーキシステムの普及が顕著。SUBARUだと「EyeSight3」、HONDAだと「ホンダセンシング」、TOYOTAだと「セーフティーセンス」が代表的なものとして知られてます。近々イモビライザーキーが義務化されるウワサもあるなど、どうしても安全面に関しては機能がひたすら搭載されていくことが多い

でも常識的に考えたら、それは当たり前。何故なら、エアバッグを搭載させたから、じゃあシートベルトを搭載するの止めちゃおうか?…みたいな発想は誰も思いつかない。

もちろん法律で義務化されて外しようがない部分もありますが、むやみに安全機能を削ったりできない以上、安全面での充実にかかるコストは価格に転嫁される。自動車の価格を安くすることが難しいのは明らか。

価格が安い自動車を欲しいか?

そもそも「価格が安かったら自動車を購入するのか?」という疑問がわく。

どうしても自動車の価格を安くしようと思えば、エンジンの性能だけではなく、シートの座り心地や見た目のデザインでも安っぽさを追及する必要がある。逆に言えば、クルマほどお金のかけ具合がモロに商品の魅力として現れる存在はない。

例えば安全装備をカツカツまで削った、最低限の装備しかないクルマを誰が乗りたいと思うのか?実際、前述のスバル車を見てみると、2014年では85%以上がEyeSightを搭載。ホンダ車でも搭載可能な車種であれば、ほとんどのユーザーがホンダセンシングを導入してる。

つまり、実は消費者自身が「高価格な自動車」を買い求めてる。そこまで言い切ると若干極論ですが、少なくとも「多少高くなってもいいから高機能なクルマを…」という消費者の願望が積み重なった結果、自動車の価格がここまで上がってると考えた方が良さそう。

若者のクルマ離れなんてのも言われて久しいですが、価格だけにとらわれずに「自動車作り」をするのが、若者の車離れを防ぐ最短の道なのかも知れない。