何故、自動車保険料が値下げされないのか?その背景と要因を探ってみたいと思う。
最近の自動車保険料の値上げ率
まず、ここ2年で自動車保険料がどれだけ値上げされたか見て行きたい。具体的に見ると、今年7月には既に損害保険ジャパンが2.5%の値上げ。来月9月に日本興亜損害保険が2.5%、10月には三井住友海上火災保険が1.9%、あいおいニッセイ同和損害保険が1.9%、東京海上日動火災保険が0.9%の値上げを実施する模様。
昨年も2%値上げされた損害保険ジャパンの契約者は、結構キツイ。東京海上日動火災保険は今年は1%未満だが、昨年は1.9%も値上げしてるのであまり喜べない。三井住友海上火災保険も昨年は1.7%で、ここ2年でおよそ3.8%の値上がりだ。
ほぼ消費増税分ぐらいの値上げが行われたと考えていい。年間で支払ってる自動車保険料の平均が6.4万円だそうだから、決して無視はできない数値。4%分アップすると、およそ2000~3000円程度の値上がり。
収めた保険料の7割が保険金として還元
保険料が値上げされる原因を探ると、保険会社の「構造的な赤字体質」にある。ただ外資系の損害保険会社なども含め、自動車保険事業においては、ここ10年を見てみるとほとんどが赤字。実は自動車保険事業は、利益率が低い。
この理由は保険料収入の大半を、事故を起こしたドライバーに保険金として還元してるから。その割合は『損害保険率』と呼ぶそうですが、1997年ではその割合が50%台だったのが、2009年では70%台にまで上昇。
2012年では68.7%にやや減少したものの、保険会社は残りの3割で人件費などをまかなってる計算。現在は保険会社全体で年間2.2兆円を事故ドライバーに対して補償してるそうですが、そりゃ利益も出るわけない。
高齢ドライバーによる事故増加
何故、損保会社による保険金の支払いが劇的に増えてるかと言うと、もちろん「事故の増加」以外に可能性はない。その中でも『高齢者ドライバー』の存在が挙げられる。高齢者が被害に合うケースも多いが、やはり加害者になるケースも増加。どうしても認知機能や身体機能が衰えて、危険予知能力が下がって事故に対応ができない。
普通小型車の標準モデルでは、70歳以上のドライバーさんは20%以上の保険料が引き上がってる。その数字が何より物語ってる。
個人でできる対応策はあるのか?
じゃあ自動車保険料の値上げに、なにか個人でできる対策はあるのか?残念ながら、やはり存在しない。周囲のドライバーの事故によって、自分の保険料に影響が出てしまう仕組みである以上、正直個人で対策できることはほとんどない。いわば、連帯責任ですから。
ここ数年で『損害保険率』がやや下がったのは、自動車事故の減少によるもの。事故全体が減少していけば、いずれ保険料の値段が下がっていくはず。
だから唯一自動車保険料アップに対応策があるとするなら、やはり一人一人が事故を起こさないように努める他ない。事故を起こしても保険金を請求しない。積極的に優秀な自動ブレーキシステムが搭載した新車を買うetc。
あと損保会社も、もう少し利益を出す仕組みをもっと考えるべき。高齢者ドライバーの保険料の値上げ率だって、まだまだ足りないのではないか。
自動車メーカーも、もっと安全対策に積極的であるべきだ。些細な事故でも起こさない自動車作りが急務。
若者のクルマ離れが論じられる時、かならず自動車に関する税金ばかりが取り上げられる。ただ、実は「高い自動車保険料」の方が何気にネックになるのではないかと思う。だから自動車メーカーも直接的に、若者のクルマ離れを食い止めることは可能だ。